法人税の繰越欠損金の基礎知識|条件やメリットなど詳しく解説
法人の経営をされている方であれば、損益計算書の数値と向きあうことが多いでしょう。
そして赤字で決算を終えてしまうと、「ステークホルダーから何を言われるか…」と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、赤字で決算を終えた場合でも、制度を上手く活用することで法人にプラスの影響を与えることが可能です。
代表的な例として、「法人税の繰越欠損金」を挙げることができます。
ここでは「法人税の繰越欠損金」の条件やメリットについてみていきましょう。
法人税とは
まず法人税の定義について確認しておきましょう。
法人税とは、法人が利益を上げた場合にその利益に対して課税される税金のことです。
法人税は企業、組合、団体、財団、政府機関など、法人として法的に独立した組織を対象としています。
企業の所在地や規模、業種などによって税率は異なり、納税期限や納税方法などについても法律で定められています。
欠損金とは
では次に、「繰越欠損金」の概念についても確認しておきましょう。
法人税の繰越欠損金とは、過年度に発生した赤字を今後の利益に充当することを認めることを指します。
結果として法人の税金負担は軽減します。
例えば、法人税率が40%で法人がX1年度に100万円の損失を計上し、X2年度に200万円の利益を計上したとしましょう。
通常であればX2年度の法人税は、200万円の利益(税効果会計は話を簡略化するために無視)に対して40%を掛けた80万円が法人税の金額になります。
しかし繰越欠損金を活用することで、X1年度の100万円の損失をX2年度の利益から控除することが可能になり、その結果X2年度の利益は100万円で法人税率40%を掛けた40万円が法人税の金額となるのです。
繰越欠損金の考え方は、法人が利益を上げることが難しい時期にも事業を継続できるように、負担を一定期間に分散させることを支援するために導入されています。
法人税の繰越欠損金のメリット
法人税の繰越欠損金を適用するメリットとしては、以下のようなものを挙げることができます。
法人税額の軽減
繰越欠損金を利用することで、将来の利益に対する法人税負担が軽減されます。
過去の損失を未来の利益と相殺することで課税所得が減少し、節税効果が期待できます。
事業継続のサポート
利益を上げることができないような状況に陥った場合、往々にして法人は短期的な利益確保に走りがちです。
しかし繰越欠損金制度により法人は短期間での利益の上げに焦点を合わせる必要がなくなるので、長期的な視点で経営を考えることができるようになり事業再建の余地が生まれます。
法人税の繰越欠損金の適用条件
メリットが多い法人税の繰越欠損金制度ですが、勿論適用を受けるためには一定の条件が必要です。
具体的には以下のような適用要件が存在します。
・事業年度開始日前9年以内に開始した事業年度に生じた欠損金であること
・青色申告で確定申告書を提出すること
・欠損金が発生した事業年度以降、毎年継続して確定申告書を提出していること
・古い年度から順次行うこと
また、適用可能期間と上限金額は、以下のようになっています。
<適用可能期間>
・平成13年3月31日以前に発生した欠損金…5年間
・平成13年4月~平成20年3月31日以前に発生した欠損金…7年間
・平成20年4月~平成30年3月31日以前に発生した欠損金…9年間
・平成31年4月以降に発生した欠損金…10年間
<上限金額>
資本金1億円以上の法人
・平成27年3月31日以前…欠損金の80%
・平成27年4月~平成29年3月31日以前…欠損金の65%
・平成29年4月以降…欠損金の50%
なお、資本金が1億円以下の法人は、欠損金の全額を繰り延べることが可能です。
法人税のご相談は三田会計事務所におまかせください
赤字が出てしまうと、悲観的になり短期的な利益確保に走りがちですが、法人税の繰越欠損金制度を活用すれば、赤字であっても長期的な視点で事業投資などを検討する余裕が生まれます。
赤字で決算を終えて今後の経営方針についてお悩みの法人経営者の皆様は、三田会計事務所にお気軽にお問い合わせください。
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